尾道簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金弐万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金四百円を壱日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は自動三輪車の運転免許を有し、広島県御調郡向島町向島農業協同組合川尻澱粉工場に雇われ、自動三輪車による澱粉原料等の運搬業務に従事していたものであるが、昭和二十九年九月三十日午後三時頃、広第六―五〇九六八号自動三輪車を運転して尾道市に赴く途中、時速約三十粁の速力で同郡向島町田尻消防ポンプ格納庫前路上にさしかかつた際、前方約八十米の地点を拡声器によりアメリカ中古衣料品販売の宣伝をしながら、反対方向から除行して来る宣伝用小型自動車を認めたのであるが、同所附近の道路の幅員は約五米で、而も右宣伝車は除行しているので児童等が後方に取り付いていて、何時被告人の運転する自動車の進路上に飛出すかも測り知れないので、右宣伝車と擦れ交うに当つては自動車運転者としては、何時にても急停車できるように速力を減じ、事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があるに拘らず、必要な右注意を怠り漫然危険はないものと軽信し、右宣伝車の前方約二十米の地点で単にアクセルを閉み警笛を吹鳴しただけで、他に速度を減ずる措置を講ぜず時速約二十五粁の速力で進行したため、右宣伝車と擦れ交わんとした際、右宣伝車の後方に取りついていた鳥越泰(当六才)が、被告人の運転する自動車の前方約七、八米の進路上に飛び出したので、衝突を避けるため直ちに急停車の措置を講じたが及ばず、右自動三輪車の前部を同人に衝突させ、因つて同人に頭部左前頭骨陥没骨折並びに脳挫傷等の傷害を負わせ、其のため同人を同年十月一日午前二時五十分頃同町向島病院で、遂に死亡するに至らせたものである。
(証拠の標目)(省略)
(適用した法令)
法律に照らすと、被告人の判示所為は刑法第二百十一条、前段罰金等臨時措置法第三条第一項、第二条第一項に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額範囲内で被告人を罰金弐万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法第十八条により金四百円を壱日に換算した期間、被告人を労役場に留置し、訴訟費用につき刑事訴訟法第百八十一条第一項本文を適用し、被告人に全部之を負担させる。
仍て主文の通り判決する。(昭和三〇年四月二八日尾道簡易裁判所)